REPORT

RACE REPORT

2022.04.07

ENEOSスーパー耐久シリーズ2022 Powered by HANKOOK参戦レポート
~第1戦 鈴鹿~

ENEOS スーパー耐久シリーズ2022 Powered by Hankookの第1戦が3月19日~20日に鈴鹿サーキットで行われ、104号車・HM-R ヒロマツデミオ2(吉田綜一郎/佐々木孝太/妹尾智充)は、ST-5クラス4位でレースを終えた。

マシンカラーリングを変更し心機一転。HM-Rオリジナルパーツも導入

今年でスーパー耐久挑戦4年目を迎えるHM RACERS。参戦車両は今までと同じだが、カラーリングは黒をベースにしたデザインに変更し、ドライバーのレーシングスーツも黒に統一。これにより、昨年と大きく印象が変わっている。

さらに、兼ねてより開発していたHM-Rのオリジナルパーツも今季から装着することに。この開幕戦では、フロントスポイラーとダンパーが導入された。実戦でデータが収集され鍛え上げられたパーツは、今後、一般ユーザーに向けても販売される。

まずは、この2つのパーツが導入されたが、今後も準備が整えばオリジナルパーツを追加予定だ。

ドライバーは昨年と変わらず佐々木、吉田、妹尾がレギュラーを務め、富士24時間レースでは大崎悠悟と吉田隆ノ介も加わった5人体制で臨む。チームを盛り上げるレースクイーン『HM Ready’s』は中条ひとみさん、新田エマさん、松尾春菜さんが務める。

今季は専属メカニックの体制も一新。これまで各店舗からサポート参加してきたサービスエンジニアから選抜された精鋭がマシンのメンテナンスを行う。今まで通り、各大会ごとに店舗のディーラーメカニックも数名招集してレースに臨む。 これまでは、若いメカニックがレースの現場を体験し、それを普段の店舗業務に役立てるという内部研修の要素も考慮されていた。その理念は今季も変わりないのだが、スーパー耐久レースの経験者がメンバーに割り当てられたことで、開幕戦から様々な作業を率先してこなしている姿が印象的だった。

カーボンニュートラルに向けた“新プロジェクト”にも、広島マツダのメカニックが参加

また、今シーズンからフル参戦を予定しているST-Qクラスの55号車・MAZDA SPIRIT RACING Bio concept DEMIO(MSR)のスタッフとして、広島マツダのメカニックの採用が決定。 こちらの車両は、カーボンニュートラルを目指した取り組みとして、MAZDA 2に次世代のバイオディーゼル燃料を搭載して、レースに参戦し、様々な開発につなげていくというもの。派遣されたメカニックたちは、HM-R以外にもマツダ系チームからメンバーを集めた混合編成という形、主にレース期間中のマシンメンテナンスやピット作業を行う。

今シーズンは広島マツダ・HM-Rからも、レースメカニックの経験者5名が派遣された。MSRは複数のチームからメンバーを募った“混合チーム”ということで戸惑う部分も少なからずあったようだが、期間中は現場で機敏な動きをみせ、チームを完走に導いた。 広島マツダの松田哲也会長は「メーカーさんが僕たちを頼りにしてくれて、向こうからお声がけいただいたのは嬉しい。先方は商品と部品を供給できる体制があり、僕たちには人材やチューニングスキルがあって色々なことができる。これが一緒になれば、お互いに良い関係を築いていけると思います。ここは大切に育てていきたいです」と語り、新たなプロジェクトの一員として広島マツダのメカニックが選ばれたことを誇りに感じているようだった。

表彰台には届かずも、最後まで攻めの姿勢を崩さず

新たな取り組みも始まり、進化を遂げているHM-R。注目の走りでも、昨年を上回る勢いを開幕戦から発揮した。HM-Rは2月22日の富士公式テストをキャンセルし、その代わり鈴鹿でテストを行うなど、万全を期して初戦に臨んだ。

3月20日の公式練習日は終日降雨のため走行できなかったが、3月19日の公式予選では、今年からAドライバー登録となった吉田からタイムアタックを行い、2分30秒955をマークした。今まで鈴鹿ラウンドでは予選で2分35秒台がベストだったが、それを大幅に上回る速さをみせた。この辺は、新パーツの効果が発揮されている証拠と言って良いだろう。

続くBドライバー予選は佐々木が担当し、アタック中に降雨に見舞われるも2分31秒567を記録。明らかに前年までと比べてタイムは上がっているが、それ以上にマツダ・ロードスター勢のペースがよく、総合結果ではST-5クラス8番手となった。それでも、ライバルとのタイム差は着実に縮まり始めており、手応えを掴みつつある雰囲気がチーム内に漂っていた。 3月20日の決勝レースは5時間耐久で争われ、途中に3回のドライバー交代を伴うピット作業が義務付けられた。ST-5クラスは燃費の関係上、給油のためのピットが追加で1~2回必要で、それをどのタイミングで消化するかが勝負の鍵となる。104号車は吉田がスタートドライバーを務め、序盤から接戦のバトルを展開。そんな中、開始15分が経とうとしたところで、ST-5クラスの車両がシケインでクラッシュ。

これにより、フルコースイエロー(FCY)がすぐに出され、状況が落ち着いたところでセーフティカー先導状態に切り替えられた。

このタイミングを利用して104号車は給油のみのピットインを済ませ、レース終盤で再給油時間を短縮させる作戦に出る。ピットインの影響で順位こそ下がったものの、レース再開後は力強いペースで周回を重ねた。

開始から1時間40分が経過した34周目に2度目のピットインを行い、吉田から佐々木に交代。ここでもペースよく走行し、レースの折り返しを迎えるころには3番手まで浮上した。開始から3時間を過ぎた66周目に再びドライバーを交代し、妹尾が乗車。ここでも安定したペースで周回を重ね、上位に食らいついた。

ゴールまで残り1時間を迎えるところで3度目となるドライバー交代を行い、スタートドライバーを務めた吉田がマシンへ乗車。レース序盤で給油のみのピットストップを済ませていたものの、確実に完走するには、もう一度給油が必要…という状況だった。

安全策をとって再度ピットインすることもできるが、そうすれば表彰台争いから脱落してしまう。この時点で3番手を走行していた104号車は、ギリギリまでコース上に留まる作戦に出た。それでもライバルのペースがよく、残り20分というところで4番手に後退。なんとか給油なしでゴールを目指したが、やはり燃料が足りず、ゴールまで10分というところでガス欠症状が出始め、再び給油のためピットに入った。

本レースではFCY導入中のピットインを禁止されているが、運悪く104号車が給油作業を行うタイミングでコース上にアクシデントがありFCYが導入された。これによりレース後に100秒加算のペナルティが科され、最後に悔しい結果となってしまったが、104号車は無事にチェッカーフラッグを受け、ST-5クラス4位でレースを終えた。


HM RACERS 松田哲也チーム代表コメント

「少なくとも昨年よりは戦えそうだなという予感を感じたレースでした。特に今回私たちが採った戦術というのが、いわゆる“安パイ”ではなく、3位表彰台を狙って前へ前へ賭けに出ていく…というものでした。前シーズンはディーラー感覚が抜けず、何かが起きる前に安全策をとる“悪癖”みたいなものがありましたが、今レースではそれを取り払い、とにかくトップを狙うという姿勢でギリギリまで燃料も保たせていった。結果的に給油のタイミングが悪くペナルティを受けましたが、攻めに転じての結果なので、戦術としては良しとしたい」

「今回、新パーツを導入したことで直線でのトップスピードも速くなっていましたし、確実に昨年までと比べて良くなった。そこは1戦目から証明できたなと思います。正直これで満足はしていませんが、私たちができる領域の中で一歩前進できたのかなと感じています。結果が出れば開発もさらに加速していくと思うので、これからも頑張っていきたいです」

ドライバーコメント

Aドライバー:吉田綜一郎

「今回は悔しかったですね。ペースは良かったんですけど、最後ガス欠とFCYのタイミングが重なってピットに入ってしまいました。そこは自分の判断ミスでもあります。でも、昨年の鈴鹿ラウンドと比べればだいぶ戦いやすくなった。ロードスター勢が燃費走行をしてペースを抑えていた分、我々はペース良く走れていたので、マシンは進化していたのかなと思います。昨シーズンを振り返ると鈴鹿が一番苦手だったイメージがある。同じ場所で今年これだけ戦えたということは、他のサーキットにいけばもっと競り合えるという事かなと思うので、期待しています」

Bドライバー:佐々木孝太

「久しぶりに表彰台が狙えそうな手応えを感じられるレースだったので、そこはすごく良かったです。最後にペナルティはありましたけど、それも攻めた結果。ドライバーの判断ミスだったり、ピット側も明確に指示を出し切れなかったりという反省点はありますが、そこは次につなげていければ。本当に久々に盛り上がることができたレースだったので、もう少し僕たちが頑張って戦えれば、また表彰台を目指せるような可能性もあると思います。もっと戦略的に、常に攻めの状況でレース運びをしないといけない。そういう意味では次戦以降、前のめりな気持ちでやっていきたいです」

Cドライバー:妹尾智充

「木曜日の走行でマシンがアンダーステア(コーナーで曲がりにくい症状)になっていたのですが、翌金曜日は雨で。走行テストや調整ができないまま、土曜日の予選、日曜日の決勝を迎えました。僕のスティントもそうでしたが、リアタイヤが結構厳しくて、燃費走行をしているロードスター勢にも太刀打ちできない状況でした。もう一度セッティングも含めて見直さないといけないと感じましたね。でも、ストレートスピードが昨年より伸びているということが分かったので、そこは良かったと思います。次は富士24時間ということで、上位を狙える可能性が誰にでもあるレースなので、ポイントを取りこぼさないよう心がけていこうと思います」

メカニックコメント

外園廉(HM-R専属メカニック)

「今年の1月1日付でHM-Rへ異動になりました。過去2回、派遣メカニックとして現場に来させてもらっていましたが、まさか自分がチームと共に全戦を回るメカニックになるとは思ってもみませんでした。配属後初のレースで緊張しましたし、これまでとは違う重圧も少し感じながらやっていました。特に、今回走ったマシンに搭載したミッションは僕がメインで組んだので、正直壊れないか心配で、不安を抱きながらの週末でした。やはり、こういう部署にきた以上は結果を残さなければとも思う。直接収益を上げられる部署ではないですし、営業店舗からメカニックを招集しレースに出ているので、表彰台に上がるなど結果を残していかないと、みんなにも納得してもらえないと考えています。そのためには、もっとデミオのことを知り尽くさないと。今回は悔しい結果でしたが、色々とデータが取れたレースだったので、これを次に活かせられるよう頑張るしかないです。HM-Rのメカニックを任された以上、今シーズンどこかで優勝したいです!」

吉田隆ノ介(富士24時間のEドライバー、今回は急遽メカニックとして参加)

「今回はメカニックとして急遽参加することになりました。こういう経験は初めてでしたが、メカニックの大変さを改めて感じられたように思います。ドライバーの意見を聞いてマシンのセットを出したりするので、セット回数が多いと、どうしてもメカニックから不満が出てきたりします。あとは、セットを変えてもうまくいかなかったりするとか……そういう難しさがあるなと感じました。メカニックの皆さんはレースの裏側でこんなに動いてくれているんだということが身に染みて分かり、改めてありがたみを感じました。それと同時に、改めてドライバーとメカニックのコミュニケーションの重要性も実感しました。両者の間でどうしても壁ができてしまいがちなのですが、富士24時間にはドライバーとして参加するので、この経験を活かしメカニックたちとしっかり意見交換していきたいです」

MAZDA SPIRIT RACING派遣メカニックコメント

上村雅輝(広島マツダ 石内山田店)

「現場で行うメカニック作業としては基本的にHM-RもMSRも同じなのですが、工具の準備をイチから考えなければいけない…など、大変なことも多分にありました。タイヤの走行距離や空気圧のデータ管理などは、過去戦のサポートで細かくやってきた経験があり、そこはMSRのサポートにも活かせたと思う。通常車両とやり方が違う部分もあり、多少戸惑うこともありましたが、今まで身につけた知識・経験を役立てられたと感じています」

柳原和弥(広島マツダ 広店)

「初めての混合編成チームということで、正直大変でした。HM-Rにはサーキットで何年もかけて培ってきた考え方・やり方があので、それに則ってマシンを調整するのが僕たち整備士の仕事。しかしながら、今回はマツダとNOPRO、そしてHM-Rが加わり、3チームが一緒になって初めてやる試みだったので、根本的な確認から始まり、最終的にレースに臨む…という感じでした。今回は完走でき、目標はひとつクリアできたのかなと思う。次戦からはもうすこし早く、効率よく作業できるようを気合を入れていきたいです」