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RACE REPORT

“ディーラーチーム”から“勝てるチーム”へ

松田哲也会長、来季に向け決意を新たに

「消化不良の1年だった」

そう語るのは、HM RACERSチームオーナー/広島マツダ:松田哲也会長。この最終戦では、チームの“成長”を感じつつも、現実として突きつけられた“結果”に唇を嚙んだ。

「開幕戦で2位に入り『今年はいけるかな?』と思ったが、その後、尻すぼみのように感じになってしまった。最終戦はタイムも良かったし、他チームと比べても遜色なかったので勝機が見えたと思ったのですが…結局うちのチームは勝負に弱いなと痛感した。今の我々は勝ちきれないんですよね。『相手を打ち負かしてやろう』といった気迫が正直まだ弱く、ディーラーとして(勝負に対して)甘いところなのかも。『ちゃんと整備して、安心安全を確認して送り出す』という基本はできている。ただ、レースは1分1秒を競う世界。時には多少無理してでも結果優先で仕掛ける気概が必要です。その点うちのチームはまだ足りないなと、この最終戦で強く感じました」

この“スーパー耐久シリーズ参戦”という取り組みは、広島マツダの若手エンジニアがシーズンを通してレーシングカーの整備を行い、サーキットで身につけた経験・技術を普段の店舗業務にも活かす…という目的も兼ね実施されているプロジェクト。
今年はレース現場でのメカニック精度を上げるべく、事前の実地研修を導入するなどして体制を強化。松田会長もチームの成長に大きな手応えを感じていたが「次に目指すべきは“結果”」と断言。来季にむけ、想いを力強く語った。

「チーム力はすごく高くなってきている。参戦した当初は他チームと動きが全然違い気恥ずかしさを感じることもあったが、今季はメカニックの人数も絞ったし、ピット作業の早さでも他のチームに負けていない。技術力としては誇れるものになって来たなと思う。『ではなぜレースで勝てないのか?』我々が今後注力し、成長すべきポイントはそこにあると感じている。メカニックの技術力は向上したし、自分たちの役割の中では最高のパフォーマンスを出せるようになってきた。あとは『チームのクルマがいま何番手を走っていて、1位になるには何が必要か』もっと全体で情報を共有し、“勝つこと”に執着しなければいけない。最終戦を見ていて強くそう感じた。この想いをみんなで共有し確立していければ、また一段と強いチームになれると信じています」

「MX-5カップの頃から数えたら来季で6年目。ここまで来ると、もうベテランというか一端のレーシングチームですからね。ここからは成長ではなく常勝を目指していかなければいけない。人もお金もそれなりに投下しているわけですから、結果を出さなくては。来年こそは、“勝ち”にこだわりたい」
新たな目標達成にむけ、松田会長はシーズン最終戦の舞台となった岡山国際サーキットを後にした。

“ありがとう、永田顧問”

2021シーズン最終戦はHM RACERSにとって、ひとつの節目となる一戦だった。立ち上げからチームに携わってきた永田顧問がこのレースを最後に現場を退くからだ。

2017年「Global MX-5 Cup Japan」への参戦から始まり、2年目となる2018年には吉田綜一郎を擁して世界一決定戦となる「Global Mazda MX-5 Cup Challenge」で日本代表として戦い、現在のHM RACERSの基盤を作った。2019年からスタートした「スーパー耐久シリーズ」へのチャレンジに於いても、毎回欠かさず現場に赴き、若手メカニックらにアドバイスを送るなど運営面でもチームに大きく貢献した。

「HMRをゼロから立ち上げ、当初は4人くらいでレースをしていたが、徐々にチームが成長して今ではこんな大所帯になった。嬉しいことだが、実績が伴っていないのが心残り。若手の人材育成やファンづくりなどディーラーの責務として当然あるが、やはりレースに出る以上は勝てるチームになっていってほしい。今後もチームに携わる人たちに願いを託したい」と永田顧問。
HM RACERS創設の功労者である彼に有終の美を飾るべく、チーム全員がパフォーマンスを尽くしたが、残念ながら今季は求める結果に届かなかった。それでも永田顧問は「これまでは次につながらないレースが続いていたが、今回は違う。良いレース内容だった」と、来季の飛躍に期待を寄せ、まぶしい笑顔を見せた。

ドライバーコメント

Aドライバー:佐々木

「今回のレースは最後にスプラッシュ(給油のみのピットストップ)をする想定で進めていました。後半にきて『スプラッシュなしでゴールできるのでは?』という雰囲気になり、僕らドライバーも感触的にどうかな…という微妙なラインでしたね。細かく確認しながらやっていましたが、途中の給油で少しガソリンをこぼしてしまい、順位も変わりようがなかったので予定通りスプラッシュを決行しました。でも、結果的にガソリン残量をみると最後までいけたかもしれず、セーフティマージンを取りすぎたのかなとも思う。最近は大きなミスもないし、確実にチーム力は上がってきています。しかし、ひとつでも順位を上げるための努力やアイディア、“勝つため”にすべきことをもっと突き詰めてやっていく必要がある。今までと比べるとクルマの完成度は上がったし、ミッションやエンジン面で大きなトラブルが出なくなってきたのは確か。でも、細かいところを詰め切れないという事実が今回浮き彫りになった。1番をとるために、もっと出来ることがあるということが改めて分かりました。来季にむけてチーム全体でそこを考えていければ良いなと思う。S耐参戦も来シーズンで4年目に入る。もっとレベルの高いところでレースができるように、シーズンオフの間に仕上げて開幕戦から上位争いをしたいです」

Bドライバー:吉田綜一郎

「ロードスター勢が速いことは分かっていたので、ピット戦略等でなんとか食らいつきたかったが、難しかった。今回は後半になってもペースが落ちず、調子良く走れたのは良かったと感じてます。チームに関しても、今年は成長を強く感じられた1年でした。これまでマシントラブルで順位を落とすケースもあったが、今年は少なかった。昨年はセッション中にトラブル修復で時間を食う…といったこともありましたが、今年はそこも改善されました。そういった点では、自分たちの走りに集中できるようになってきたと思う。今シーズンは僕自身、欠場を余儀なくされるレースもあり、色々ありました。悔しい気持ちはあるが、来季は今年と違った形でレースをして、結果につなげていきたいと思います」

Cドライバー:妹尾智充

「最終戦にむけてテストを重ね、良いクルマに仕上がって来ている実感はありましたが、まさか予選であそこまで良いタイムが出せるとは思っていませんでした。予選もギリギリまで調整を考え、各ドライバーが違うマシン設定で走り、その中で一番良かったセッティングで決勝を戦うことができた。だからこそ、リアタイヤ無交換でいけましたし、終盤はそれなりに厳しかったですが、これまでのように苦戦することもなかったです。レースでは1cm単位でブレーキを我慢して、88号車のロードスターに抜かれないよう頑張りました。結果的には負けてしまいましたが、それを見てみんなが『面白かった!』と言ってくれたのは唯一の救いかなと思う。僕自身、ST-5クラスは何年も戦ってきましたけど、正直今回が一番苦しいシーズンでした。その中でも最終戦にむけてみんながクルマを良くしてくれて、入賞圏内に入れたのは良かったです」

ディーラーメカニックコメント

呉店:柳原和弥さん

「富士24時間レースに続いてシーズン2回目の参加でした。初参加の時と比べると落ち着いて作業ができたと思います。全体の動きも少しずつ分かってきて、周りを見ながら『いま誰が何をやっているのか?』把握しながら対応できたかなと思う。でも、改善できるところも多々あったと思います。僕自身、富士24時間しか経験がなく、短いピット作業が初めてで、そこはかなり勉強になった。この2大会での経験を通して“早さ”と“正確性”が本当に大切なことだと実感した。作業スピードは重要ですが、そこで何かがあると、さらに時間のロスになってしまいます。早さと正確性、これを普段の業務でも気をつけてやっていきたいなと思います」

宇品本店:上地拓武さん

「僕は前回の鈴鹿大会に続いて、今季2回目の参加となりました。前回はハプニングが多く、予定外の動きもあって『どうしたらいいのか…』とバタつきましたが、今回はピット作業もスムーズにできたし、前回の反省点も活かせたように感じています。今回もミッション交換をしましたが、いつもだったら外す部品を『こうすれば外さずにできる』など、メカニックチームに入ることで新たな知識も得られたので、そういった現場での工夫みたいなところは、日頃の店舗業務にも活かしていきたいです」