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RACE REPORT

2022.10.06

ENEOSスーパー耐久シリーズ2022 Powered by HANKOOK参戦レポート
~第5戦 もてぎ~

ENEOS スーパー耐久シリーズ2022 Powered by Hankookの第5戦が9月3日~4日にモビリティリゾートもてぎで行われ、104号車・HM-R ヒロマツデミオ2(吉田綜一郎/佐々木孝太/妹尾智充/吉田隆ノ介)は、ST-5クラス3位表彰台を獲得した。

長いインターバルを味方に。テスト走行からのもてぎ対策が功を奏す

近年、スーパー耐久では参加台数が年々増加し、各パドックに全車が収まりきらない事象が発生している。そのため、ST-1~ST-5クラスで今季から調整が入り、各大会ごとに“不参加クラス”を設定して、全7戦のうち指定された1戦に参加せず、全6戦でシーズンを戦う…という新ルールが採用されている。

ST-5クラスは、前回のオートポリス大会(第4戦)がこれに指定されたため、第4戦には参加せず第5戦・もてぎを迎える事となった。HM RACERSにとっては、優勝経験もあり相性の良いオートポリス戦に参加できないのは不本意だったが、約2ヶ月近いインターバルができたため、苦手意識のあった第5戦の舞台、モビリティリゾートもてぎで事前にテスト走行を行いサーキットでの調整を進める事ができた。

このテストではセットアップの方向性の確認に加え、若手ドライバー育成に向けたオーディションも実施。吉田隆ノ介選手をDドライバーとして新たに登録するなど、もてぎ戦に向け準備を整えた。

テスト走行で得たデータを分析し、ウィークポイントを明確化したチームはさっそく改善に着手。新たなパーツを投入するなど試案を重ね、岡山国際サーキットでのシェイクダウンを経て9月の本番を迎えることができた。

しかし、パーツ変更の影響でマシンのセッティングはイチからやり直し。サーキットも「木曜日は終日ウェットコンディション、金曜日は午前中が雨」という悪条件に見舞われ、思うようにマシンを仕上げられずメカニックは苦戦を強いられた。公式予選までに与えられた時間はわずか…。チームは全力で作業にあたり、打開策を探った。

そして、迎えた公式予選。ここまで上手くいかなかったセッティングがギリギリのところで噛み合う。Aドライバー・吉田綜一郎がアタックに出て 2分20秒893をマーク。順位としてはST-5クラス4番手だったが、午前中よりタイムを2秒も縮め、一気にライバルに接近した。

続くBドライバー予選では佐々木孝太がアタックを担当。ベストタイムを更新する2分20秒258を叩き出し、ST-5クラス2番手につけた。2人のタイムを合計した総合順位でクラス2番手を獲得。これまでチームが諦めずに取り組んできた努力の積み重ねが、結果に繋がった瞬間だった。

“SPINGLE MOVE × HM RACERS” コラボスニーカー。サーキットに初見参!

この第5戦もてぎ大会では、ドライバーをはじめチームスタッフが、地元・広島のシューズメーカー「SPINGLE MOVE」とコラボレーションした、HM-R限定スニーカーを履いてサーキットに登場。色鮮やかなデザインが、ピットウォークやグリッドで注目を集めた。

広島県府中市に本拠地を構える株式会社スピングルカンパニーが手がける「SPINGLE MOVE」は、世界に “Made in Japan” の心を伝えるシューズブランド。職人が手作業で1足ずつ靴を仕立て上げている。

まず目を引くのは、104号車を彷彿とさせる、黒を基調としたアッパーのカラフルなデザイン。さらにシューズ側面に箔押し、ヒールには刺繍で、HM RACERSのチームロゴが入っているのも特徴だ。チームスタッフが揃いのアイテムを着用することで存在感も増し、ピットで異彩を放っていた。

田頭&大崎のダブルエンジニア体制で、より緻密な戦略を実現

また、今回のもてぎ大会では、第2戦・富士24時間レースでDドライバーを務めた大崎悠悟が専属エンジニアとしてチームに帯同。チーフエンジニアを務める田頭翔太とともに“ダブルエンジニア体制”でチームをサポートした。

レースにおけるエンジニアの仕事は、マシンから得たデータやドライバーからのフィードバックをもとにセッティングを決めたり、レース全体の戦略を練るなど多岐にわたる。平素はチーフエンジニアの田頭がこの役割を担っているが、ここに大崎が加わり、他車の走行状況や燃費計算をチェックすることで、より緻密な戦略を練り正確にレースを進めることができた。

大崎は過去にも田頭のサポート役として、ドライバーの傍らデータチェックを兼務する事があったのだが、今回はエンジニア専属という形で裏側からチームを支えた。

今回のスーパー耐久シリーズ、特にST-5クラスは0.1秒を争う激戦が展開されており、燃費計算やピットストップのタイミングをどれだけ工夫できるか、これが勝敗を左右する重要な要素となっている。HM-Rでは細かな要素を1つずつ強化し、スーパー耐久シリーズの上位チームに匹敵するほどの体制が仕上がってきた。

勝ちにこだわり攻めの戦略で臨むも、悔しさが残った3位フィニッシュ

そして迎えた9月4日(日)の決勝レース。今回、不参加に指定されたST-3クラスを除き、8クラス混走で5時間耐久でレースを争った。前日の公式予選で大きな手応えをつかんだHM-Rは、勝ちにこだわり大きな決断をする。それは、「吉田(綜)と佐々木のドライバー2名で5時間を走り抜く」という作戦だ。

今回のもてぎは、途中にドライバー交代を伴う3度のピットストップが必要となるが、登録したドライバー全員が走行しなければならないという規定は無い。他チームでも、1周のみで走行を終えるドライバーもいれば、全く出番がないドライバーもいる…など、臨機応変な判断が求められる一戦でもある。

クラス2番手でのスタートという好機会を逆手に取り、ドライバー4名の中でも特にペースの良い2名を交互に走らせタイムを稼いでいくのが本作戦の狙い。妹尾と吉田(隆)はスタンバイという事になるが、勝利のためにサポートに回ってくれた。こうして勝つためにチームが一丸となり、佐々木がマシンに乗り込みスタートの時を迎えた。

午前11時過ぎにレースが開始されると、佐々木は予選同様の勢いで、前を走る4号車ホンダ・フィットに迫る。予選から圧倒的な速さをみせる4号車に少しずつ引き離されたが、2番手をキープしながら懸命に追いかける佐々木。

しかし、パーツ変更後のセッティングで、決勝レースを想定したテスト走行ができなかったことが影響し、想定したラップタイムを維持できず。徐々に後方に迫られる形となり、開始1時間を迎えたところで17号車マツダ・デミオに接近され、2番手争いが勃発した。

巧みに走行ラインをコントロールしながら、隙を与えない走りを徹底するも、28周目に先行を許し3番手に後退。その後、31周を終えたところで1回目のピットストップを敢行し、佐々木から吉田(綜)にドライバーを交代した。

ライバル各車が1回目のピットストップを完了したところで再び2番手を取り戻した104号車。開始2時間を迎える頃には、トップを走る4号車との差は25秒に縮まっていたが、このスティントでも思うようにペースを上げられず苦しい展開となった。

5時間耐久では3回のドライバー交代に加え、給油のみのピットストップも必要となる。もちろん、燃費走行を徹底すればピットストップの回数を減らせるが、ここでも攻めのレースを意識し、佐々木と吉田(綜)のスティントで各1回ずつ給油することをあらかじめ想定していた。

まずは開始2時間5分が過ぎたところで給油のみのピットストップを敢行し、吉田(綜)がそのまま走行。細かな工夫を重ねてタイム短縮を試みるが、結局ペースが上がらぬまま開始2時間45分を迎えた66周目で3度目のピットストップを行い、再び佐々木がマシンに乗り込んだ。

この時点で104号車はクラス4番手。思うようにペースが上がらず、徐々にライバルに追いつかれる展開となったが、上位を走っていた17号車がトラブル発生で緊急ピットイン。ここで3番手を取り戻し、67号車ホンダ・フィットがピットストップに入ったタイミングで逆転。再びクラス2番手に浮上した。しかし、後方から72号車マツダ・ロードスターが好ペースで追い上げ、104号車に接近。残り1時間を切ったところで逆転を許してしまう。

104号車は佐々木のスティントで給油のみのピットストップを一度行い、103周目・残り45分となったところで最後のピットインを敢行。吉田(綜)にステアリングを託した。

最後までポジションアップを目指して攻め続けるもライバルには届かず。ST-5クラス3位でフィニッシュ。今シーズン2度目の入賞を決めた。

3位表彰台という喜ばしい結果ではあるものの、優勝を狙い、戦略を練ってシビアに取り組んだもてぎ戦なだけに、レースを終えたチームに笑顔はなかった。トップに届かなかった。やり場のない悔しさを必死に堪えるオーナー・松田哲也をはじめ、ドライバー、スタッフの表情が印象に残る一戦となった。

この結果、104号車はST-5クラスで総合ランキング3位となり、トップとの差はわずか2ポイント。残り2戦ではクラス優勝に加え、年間チャンピオンをかけた争いが待つ。

HM RACERS 松田哲也チーム代表コメント

「本当に『申し訳ない』という気持ちでいっぱい。今回は絶対に勝てるという自信を持ってスタートしましたが、最初の5周を終えて4号車の速さに圧倒された。喰らいつくのが難しかったし、他チームにも追いつかれ(順位を)維持するのが精一杯だった。今回はチームとして勝つために、心を鬼にしてAドライバーとBドライバー2名で決勝を戦うという戦略をとりました。それを結果につなげられなかった不甲斐なさもあるし、本当に悔しいの一言に尽きる。とはいえ、優勝争いには食い込めた。そして予選で2位を獲り、決勝で3位に入れたというのは事実です。マシンに信頼性があり、ドライバーやメカニックもミスなくやってくれている。チームとして成熟しているので、常に優勝争いが出来ているチームになっている。ST-5クラスで3位、トップとは僅差の状態である現状がその証し。つまり、年間チャンピオンを十分狙える位置にいるという事になります。あとは、残り2戦でなんとか優勝したいですね」

ドライバーコメント

Aドライバー:吉田綜一郎

「決勝では、最初の僕のスティントで急激にタイムが落ちて苦しみました。ここのペースが良ければもうちょっと上に行けたかなと思う。ターゲットとしていたタイムが2分23秒台だったのに対し、実際は2分25~26秒台。原因が何だったのかが分からず疑問を抱えながら走っていましたが、最終スティントは想定通りのペースで走れたので、この原因を払拭できればもっと上位を狙えると思ってます。今回は優勝を狙っていたので悔しい気持ちが強い。表彰台フィニッシュは貴重なので、その点では進化したところもあると思っていますが…。デミオ勢として、もてぎは苦手意識の方が強かったが、決勝でこれだけ戦えたのは良かったです」

Bドライバー:佐々木孝太

「全力を尽くしましたが…(優勝には)届かなかったですね。とはいえ、結果的に表彰台に上がれているし、2位に近い位置でフィニッシュできているのでベースの部分でレベルは上がってきたのかなと思う。マシンのポテンシャルをチームもドライバーもしっかりと引き出せていると思うが、あと少し…。もう一息あればより優勝に近づけるのかなと。何とかしないといけないと強く感じていま。今回は新パーツを投入し、ベースのセットを大きく変えて予選にはギリギリ間に合わせたが、決勝ではぶっつけ本番になってしまった。そういう意味では辛かったところもあり、課題を感じるが、逆に言うとまだ改善余地があるという事にもなる。次の岡山はチームの地元に近いレースなので、何とかしたいですね」

Cドライバー:妹尾智充

「正直、決勝で出番がなかったという経験は初めてでした。もちろん悔しいですが、このレースウィークで個人的にレースペースの改善に取り組みました。ドライビングの課題が明確になって良かった。シリーズポイントを考えると、今回のもてぎは絶対に落とせなかった一戦。決勝の朝に基本戦略(ドライバー2名で走り抜く)が決まった時も仕方ないと思った。ただ、次戦・岡山は自分のホームコースなので、しっかり速さをみせて戦いたい。岡山戦で優勝して、シリーズランキング1位になりたいと思っています」

Dドライバー:吉田隆ノ介

「自分に未熟さがあり、兄(吉田綜一郎)のように速く走れなかったのは反省点。しかし、ドライバー採用の機会をいただけて、チームの皆さんに感謝しています。僕自身もテスト日や予選を走れたことで経験を積めたのと同時に、いろんな目標が見つかりました。これをバネにして次の岡山に向けて準備を進めていきたい。早くチームに貢献できるドライバーになりたいです」

エンジニア・メカニックコメント

チーフエンジニア:田頭翔太

「今回はチームメカニック兼チーフエンジニアを担当しました。レース経験が蓄積され、今回サポートに入ってくれたメカニックが経験者ばかりだったので、ある程度伝えておけば任せられる。スタッフがしっかり支えてくれる感じがあって安心できました。エンジニアは今回、大崎君に手伝ってもらいました。彼はドライバー経験もあるので、色々な視点で分析してもらい、それをドライバーに伝えることができたのが良かったです。一人でエンジニア業務をこなそうと思うと、全てに目を行き届かせるのは難しい。今回は自分一人ではできないところを周りがサポートしてくれたので、すごくありがたかったです。本選に関しては、悔しいの一言。もう一歩でした。例えばFCYが入るかもしれない…という場面でピットに入るか入らないか?という混乱があり。勿体なかったなと思う。最後は72号車との勝負になって、追いつければ良かったが戦いきれなかった。そこも悔しいです。次は地元から近い岡山なので、優勝したいですね」

データエンジニア:大崎悠悟

「今まではエンジニア兼ドライバーという形で参加していました。しかしそれでは両方とも中途半端になってしまうので、どちらかに絞った形で帯同させてほしい、という思いがありました。そういう意味で、今回は勝ちにこだわって出来る対策は全てやり、決勝でもドライバーを2名に絞る…という戦略を獲った訳ですが、勝ちにこだわった一方で、この判断は重かったなと思う。正直、今シーズンで最も勝ちにこだわった戦略だったかもしれない。ここまでして勝てなかったという結果に対して、Cドライバー、Dドライバーに申し訳なさを感じています。途中のピットストップでエンジンがかからないなど細かなロスはありましたが、自分たちが出来る最大限のことはやれたと思ってます」