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RACE REPORT

2022.07.27

ENEOSスーパー耐久シリーズ2022 Powered by HANKOOK参戦レポート
~第3戦 SUGO~

ENEOS スーパー耐久シリーズ2022 Powered by Hankookの第3戦が7月9日~10日にスポーツランドSUGOで行われ、104号車HM-R ヒロマツデミオ2(吉田綜一郎/佐々木孝太/妹尾智充)は、ST-5クラス5位でレースを終えた。

今季初勝利を目指し、東北の地へ。予選では1年前とは見違える走りをみせる

前回の富士24時間レースで2位を獲得した104号車。そこから約1ヶ月のインターバルを経て、東北・宮城県にあるスポーツランドSUGOにやってきた。HM-Rのメンバーは広島から自走で約2日かけて現地入り。木曜日からの練習走行に備えた。

第3戦が行われるSUGOは、最終コーナーからホームストレートにかけての10%(高低差約73m)の登り勾配が特徴で、激しいアップダウンと中高速域のコーナーが多く、登り勾配でフロントタイヤの荷重が抜けるFF車両にとっては不利なサーキットだ。過去を振り返るとマツダ・ロードスター勢が優勢で、実際に1年前のSUGO大会でも予選からライバルに大きく差をつけられた。
それに対し、HM-Rは今年から独自のパーツを導入するなど、マシンを少しずつ進化させたこともあり、戦闘力がアップ。いざ練習走行を走り出して見ると、ライバルと遜色ない走りをみせ、上位に食い込むタイムを記録。チームも『今週はいける!』と手応えを感じていた。

木曜日のスポーツ走行でセットアップを固める予定が、当日は激しい雨。決勝レースは晴れ予報であったため走行をキャンセルし、マシンのチェックに時間を費やすことになった。

翌金曜日は曇り、専有走行で若干のアンダーステアが出るため、多くの時間をセッティングに割くことになったが、それでもライバルたちと遜色ない走りを見せていた。 土曜日午後に行われた公式予選は、時折雨が降る難しいコンディションとなったが、104号車は力強い走りを披露。まずはAドライバーの吉田綜一郎がアタックに臨み1分40秒235でクラス4番手につけると、続くBドライバー予選では佐々木孝太が、さらにペースアップ。1分39秒858でクラス2番手につけた。トップの72号車マツダ・ロードスターには差をつけられてしまったが、これまで苦手意識の強かったSUGOで数多くのライバルを打ち破り、総合でクラス2番手を獲得。まさに、これまでのチームの努力が実った結果となった。

しかし、その後のCドライバー予選でハプニングが起こる。妹尾が、セッション後半のピットアウト時にコースを走る車両との交錯を防ぐ境界線(合流地点の白線)を踏んでしまったのだ。残念ながらこれがペナルティ対象となり、2グリッド降格の厳しい処分を受けることとなった。結果として、104号車はクラス4番手でのスタートが確定。それでも、今週末の好調さを考えると、決勝レースでは優勝を狙えるだけの手応えがあり、チームも今までにない前向きムードに包まれていた。

予想以上の暑さにやられ…決勝レースで思わぬ苦戦を強いられる

今回のSUGOは、全体を2グループに分けて予選・決勝が行われ、ST-5クラスはグループ2に分類されて、午前8時40分からの決勝レースに臨んだ。いつもより早い時間帯からのスタートだが、この時点で気温はすでに30度に達しており、文字通り今年一番の暑さの中でレースが始まった。

クラス4番手の104号車は佐々木がスタートドライバーを担当。開始直後の第一コーナーで早くも1台を追い抜き、そのままトップを争う2台を追いかけようとした。

ところが2周目に入るあたりで、ST-5クラスの1台が白煙を上げてマシンストップ。コース上にオイルが出たため、セーフティカーが導入された。スタートから約20分が経過したところでレースが再開。再びトップを目指したが、上記を争うマツダ・ロードスター2台との差は離れていき、背後には数台のマシンが迫り、防戦一方の展開となってしまった。午前中のレースということもあり、周回を重ねるにつれて、気温と路面温度は上昇。これにより104号車はアンダーステアに苦しめられてしまったのだ。

それでも佐々木は何とかポジションを守ろうと必死の走りをみせたが、スタートから50分のところで1台に抜かれて4番手に後退。その直後に1度目のピットストップを行い妹尾にドライバー交代。フロントタイヤ交換と給油を終えて、コースに復帰した。

各車が1回目のピットを終えると6番手に後退してしまったのだが、上位を走る1台がペナルティを受けたため、5番手に浮上した104号車。中盤のスティントも暑さとの戦いで、なかなかペースを上げられない状況が続いたが、妹尾が大きなミスなく走り抜き、チェッカーまで残り1時間のところでピットイン。アンカーの吉田にバトンを繋いだ。

通常、3時間レースでは、2回のピットインのうち片方をタイヤ交換無しにする作戦をとるが、予想以上の暑さでフロントタイヤのグリップダウンが著しく、2回目のピットストップでもフロントタイヤを交換。後手を踏む展開が続いたが、吉田は何とかポジションを死守しようと粘り強い走りをみせた。途中、他車に接触を受け、フロントリップスポイラーが大きく破損しながらもレースを続行。後方からライバルが迫る中、なんとかポジションを守り抜き、クラス5位でチェッカーを受けた。

前回の富士24時間レースで2位表彰台を獲得し、今回も予選から好調な走りを見せていただけに、決勝での思わぬ苦戦に、レース後はドライバーのみならずメカニックたちも落胆の表情をみせていた。

この後、グループ1の決勝レースの際には、他のチームの動きなどを積極的に見学。以前に増して勝つことにこだわり、それぞれのメンバーが積極的に行動を起こしている姿がみられた。この悔しさを胸に、HM RACERSは次戦・モビリティリゾートもてぎ大会へと向かう。

HM RACERS 松田哲也 チーム代表 コメント

「ストレートは速くなっているしクルマも問題なかった。Cドライバー予選で2グリッド降格のペナルティを受けましたが、それも“厄除け”みたいな気がして、勝つのを確信していたところがありました。しかしフタを開けてみると“力負け”をしたという感じ。戦略的にミスはなかったし、やるべきことはやりましたが…ここまで差が出るとは思わなかったです。やっぱり、FF車とFR車の違いとか、温度のこと、タイヤへの負担…色々ありますがそれだけが原因じゃないかなと。まだまだ考え直すところが多々あるのでは、と思います。我がチームは、他者から見ても本当に速くなったと感じてもらえていると思う。自分たちでも“速くなっている”という実感がある。今回、特に予選では、他のロードスター勢よりも順位が上だったし、ライバル車両と戦える実力があると思っています。ST-5クラスは十数チームいますが、毎回のように優勝候補に挙げられるチームになったてきたかなとも思います。あとは勝負の勘どころを押さえられるかどうか。色んな要素が味方して、全部バシッと噛み合ってくれる日が残りの3レースできてくれると嬉しいですね。次のレースまで1ヶ月半あるので、その間にクルマのセッティングも見直して、とにかく、やれることは全部やって次戦に臨もうと思います」

ドライバーコメント

Aドライバー:吉田綜一郎

「決勝は、かなり気温が上がっていて、レースウィークの中では一番路面コンディションが悪かったと思います。なかなかペースが上げられなかったのが悔しいですけど、自分としてはその状況下でベストな走りができたと思ってます。同じFF車両のライバルが前にいたので、そこと同じペースで走りたかったのが正直なところ。次はもてぎでのレースになりますが、フロントタイヤに負担がかかるコースなので、うまくペースアップできるようにしたいです」

Bドライバー:佐々木孝太

「練習走行から良い流れできていましたが、決勝での高気温・路面温度の上昇は想定以上でした。ここまで温度が上がってしまうと大変ですね。もうちょっと戦えるかなと思ったんですけど、思いの外厳しかったです。あとはスタート直後のセーフティカーも誤算となりました。燃費的にも僕たちが有利で、ロードスター勢は燃費を気にしてペースを上げられないだろうと予測していたのですが、開始早々でいきなりセーフティカーが出たことが相手側に有利に働いてしまいました。予想以上の暑さでタイヤにも負担がかかってしまいましたが、他のFF車が前でゴールしているのを見ると、チームとしても上手なタイヤマネジメントを考えないなといけないなと感じてます。大きなミスはなかったですが、全体的なスピードが足りなかった。次までにこの課題をクリアしたいですし、以前と比べると課題というものが減りつつあるので、もう一度見直して次戦に臨みたいです」

Cドライバー:妹尾智充

「予選では僕のミスで2グリッド降格になってしまいました。なんとか決勝の走りで挽回したいなと思って、担当スティントでは最初から攻めていきました。タイヤがキツくなるということは最初から分かっていたのですが、3時間レースなので守っても仕方がないと思い…とにかく自分の全力を出し切って走りました。路面温度が上がるとフロントタイヤがキツくなることは分かっていたので、そこはちゃんと意識して走れたと思います。今回は(優勝を)狙えるかなと思っていたので悔しいです。自分のミスも含め、ちゃんと反省して次に向かわなきゃいけないなと思ってます」

ディーラーメカニック コメント

広島マツダ 西条店:才崎俊也

「レースのメカニックとしてサーキットに来るのは5回目です。前回の富士では55号車・MAZDA SPIRIT RACINGを手伝って、今回はHM-Rとしての参加になりました。HM-Rは活動期間も長く、ノウハウも出来上がりつつあるので、僕たちのように店舗から派遣されたメカニックでも、現場に来て何をすれば良いのか理解できるようになっています。その辺は以前と比べてかなりスムーズになりましたし、現場の環境面も良くなったなと感じてます。あとは結果がほしいですね。何回も参加しているので、優勝を経験したいです。次回以降は55号車の方でレースに参加予定です」

広島マツダ 海田店:両徳一輝

「昨年の富士ともてぎに参加させてもらって、今回が3回目となります。まだ慣れたとは言えない感じで、先輩方から指示を出してもらって何とか出来ているかな…という感じ。それでも当初と比べると、パッと何かを言われたことに対して『この作業をすればいいんだな』と分かるようになり、心構えはできてきたかなと思います。あとは、昨年の富士24時間で一緒だった才崎さんが今回も一緒で、すごく心強かった。今回は練習走行から調子が良かったので、優勝も狙える!と思ったのですが、残念でした。そろそろ優勝の喜びがほしいですね。次のもてぎも参加予定なので、頑張ります!」