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RACE REPORT

2022.11.08

ENEOSスーパー耐久シリーズ2022 Powered by HANKOOK参戦レポート
~第6戦 岡山~

ENEOS スーパー耐久シリーズ2022 Powered by Hankookの第6戦が10月15日~16日に岡山国際サーキットで行われ、104号車HM-R ヒロマツデミオ2(吉田綜一郎/佐々木孝太/妹尾智充)は、ST-5クラス13位となった。

シリーズチャンピオンをかけた勝負の1戦、事前にテストを繰り返し準備

前回の第5戦もてぎ大会では、一歩及ばずの3位フィニッシュを果たした104号車。現在はST-5クラスでトップから2ポイント差のランキング3位につけ、待望のクラスチャンピオンに手が届く位置につけている。

最終戦でのチャンピオン獲得のためにも、この第6戦は絶対に落とせない。加えて、今回の舞台 “岡山国際サーキット” はチームの本拠地である広島に近く、地元での一戦という位置付けにもなる。この重要な一戦で果を残すべく、チームは事前に何度もテスト走行を行いマシン調整を繰り返してきた。

事前のテストでは、今季、シーズンを通して頭を悩ませた “アンダーステア対策” をメインとし、その結果デファレンシャル(以下、デフ)を2Wayから1Wayに戻すことに決定した。

大会前、木曜の特別スポーツ走行で最終調整に臨んだが、ST-5クラスの他ライバルたちと大差があり。サスペンションのセッティングを幾度となく繰り返すも、そのタイム差は一向に縮まらなかった。更に、持ち込んだミッションに「4速に入り難い」という症状が出ていた。スポーツ走行終了後のミーティングで、ドライバーの「2Wayデフを試してみたい」という意向と、先の4速問題もあり、チームは各部の点検と合わせ2Wayデフ仕様のミッションへ載せ替えを行った。

金曜日の専有走行でも思うようにタイムが伸びず、専有2枠走行後、ドライバーからは「やっぱりデフは1Wayの方が」との意見が出た。しかしチームは1Wayデフを1セットしか持っておらず、再度ミッションを下ろし、4速に問題を抱えたミッションに組み込まれていた方の1Wayデフを移植する事にした。この作業に時間をかけるため、車検と専有走行の最終枠をキャンセルする必要があり、サーキット側と話をつけ「車検は土曜の7:00に受ける」という方向で了承を得て作業にとりかかった。

土曜の朝に行った直前のフリー走行でも、クラス9番手タイムと伸び悩む結果。フリー走行後もセッティングについてミーティングを行い、協議の結果、チームが持ち込んだセッティングの微調整で予選を戦うこととなった。

低速コーナーが多い岡山国際サーキットは、「マツダ・ロードスター勢が有利」と言われるコース。さらに、104号車は今回、25kgのウェイトハンデを背負ってレースに臨むこととなっている。これまでの成績に応じて課されるウェイトハンデ。上位成績を残してきたチームに与えられる“勲章”のようなものではあるが、重りを積む分、マシンの戦闘力は下がってしまう。それが接戦のST-5クラスでは劣勢の要因となる。

13時20分から始まったグループ2の公式予選。まずはAドライバーの吉田がコースインしタイムを縮めていく。午前中より3秒も速い1分49秒299を記録し、ST-5クラス4番手につけた。チームの頑張りにより、これまで悩んできたマシンのバランスが改善されたのだ。

そのままBドライバーの佐々木にバトンタッチ。途中、赤旗中断があったが再開後にしっかりとタイムアタックを決め、1分49秒587を記録。ここでもクラス4番手につけた。2人のタイムを合計した総合順位でもクラス4番手を獲得。見事、ランキングトップを争うライバル勢より前のポジションを勝ち取った。

レースクイーンのコスチュームが一新! ファンの注目を集める

この岡山大会から、HM RACERSを応援するレースクイーン『HM Ready’s』の新コスチュームがお披露目された。今まで同様 “白” がベースとなっているが、デザインは完全に一新され、差し色のブルーが目を惹くアクセントとなっている。今回は2日間ともピットウォークが開催されたが、どの回でも人気を集めており、普段より多くのファンがHM RACERSのピット前に集まった。

今シーズン、HM Ready’sとして活躍する新田エマさんは「普段こんなに露出することがないので、正直ちょっと恥ずかしかったのですが、可愛いデザインに仕上がっていて嬉しかったです」と感想を披露。また、松尾春菜さんは「今までのコスチュームと比べて大胆かつセクシーになりました。ファンの皆さんからの反応もすごく良く、SNSで写真を投稿したら、いつもの6倍くらいの反応で返ってきました!」と新コスチュームへの反応に驚いた様子を見せた。

折しもチームがチャンピオン争いに絡む最中、大事な終盤戦でのコスチューム変更ということで、中条ひとみさんは「残り2戦、チームがチャンピオンになれるよう私たちも応援を頑張ろうと思っていました。そのタイミングでコスチュームが刷新されて気持ちも新たになりましたし、より“1位にこだわって頑張ろう”という思いが芽生えました」と心境を語ってくれた。

岡山大会を含む残り2戦。HM RACERSが最高の結果を得られるように、彼女たちもチームを盛り上げていく。

展開を味方につけ、表彰台も見えてた矢先に…またしても不運が襲う

今回の岡山大会は、全9クラスを2つのグループに分けそれぞれ3時間のレースを行うフォーマットで争われる。HM RACERSが参加するグループ2の決勝は、16日(日)午前8時30分から始まった。

ST-5クラス・4番手からスタートする104号車は、吉田がスタートドライバーを担当。途中に2回のドライバー交代を伴うピットストップが必要となるため、中盤の第2スティントを妹尾、最終スティントは佐々木が担当するという戦略をとった。 各車がグリッドを離れてフォーメーションラップが行われたが、その最中にアクシデントが発生し、1台のマシンがコース脇でストップ。それを回収するために、エクストラフォーメーションラップとして数周のセーフティカー先導があった。

5周目に入ったところでグリーンフラッグが振られレースが再開すると、吉田は一気に突破口を見出し、1周目でポジションを2つアップ。しかし、ウェイトハンデが無いライバル3台の先行を許し、4番手でレース序盤を進めることとなった。

ペース的には前についていくのがやっと…という状況だったが、なんとか離されずに食らいつき、ポジションをキープ。そんな矢先、ST-3クラスでアクシデントがあり、ストップ車両が発生。ここでフルコースイエロー(FCY)が導入されてマシン回収が行われたが、想定外に作業が難航し、セーフティカー先導の状態に切り替えられる事態となった。このタイミングで104号車は1度目のピットストップを行い、吉田から妹尾に交代。第2スティントに突入した。

スタートから約1時間20分が経過した38周目からレースが再開され、4番手につける104号車はひたすら上位を目指して周回を重ねる。ウェイトハンデもあり苦しい展開が続いたものの、岡山国際サーキットは妹尾にとってなじみの深い地元コース。安定したペースで走行して、タイムは約1時間を走破。63周目にピットインし、佐々木にステアリングを託した。

このままいけば、4位は確実…。上位車両にトラブルがあれば表彰台の可能性も見えてくる。本来なら、最後に給油のみの追加ピットインを行わなければならないのだが、途中のFCYやSC導入で燃費を稼ぐことができ、あとは「チェッカーまで地道に走り続けるだけ」という状況だった。

しかし…ここで予想だにしないトラブルが104号車を襲う。佐々木に交代して以降、順調に走行していたマシンが、ゴールまで残り30分を迎えようというところで突然ギアに不調が発生。5速が使えなくなり、70周目に緊急ピットインを余儀なくされた。

急遽マシンを調べると、ミッションケースが割れて小さな穴からオイルが漏れ出ている状態だった。しかし、このタイミングでミッションを交換するとゴールに間に合わない。万事休すかと思われたが、応急処置を施し、壊れてしまった5速を使わずレース続行を決断した。方針決定後、広島マツダ各店から派遣されたメカニック陣は瞬時に作業に着手、わずか数分で最低限ながら走行可能な状態へと戻した。そして、ゴールまで残り15分のところで104号車はようやくレース復帰を果たす。

とはいえ、応急処置したミッションケースが、また不具合を起こす可能性もあった。佐々木は丁寧にマシンをドライブ。なんとか104号車をゴールまで運び、ST-5クラス13位で完走を果たした。

無事完走の喜びも束の間、ポイント付与は10位までが対象となるため、今回は1ポイントも獲得することができず…。チャンピオン争いの可能性はどうにか残したものの、トップとの差は16.5ポイントと大きく広がってしまった。途中まではレース前予想をはるかに上回る善戦をみせていた104号車。それだけに、ドライバーのみならず、メカニックらの落胆は非常に大きなものがあった。

HM RACERS 松田哲也 チーム代表 コメント

「この岡山大会は年間チャンピオンもかかった大事な一戦でした。予選では上位陣が後方に下がってくれたので、レースで1位は難しくても、年間ランキングで暫定1位になれればと思っていましたが…。なんとコメントしていいのか、正直言葉が見つかりません。人生と同じで、レースもなかなか上手くいきませんね…。今回はドライバー3名もベストを尽くしてくれたし、何よりメカニックがすごく頑張ってくれた。チームの成長を感じることができた一戦でした。1~2年前の我々なら、あのタイミングでトラブルが出たら恐らく諦めていたと思います。今回も少しそんな空気になりかけましたが、全員が最後まで諦めず頑張ってくれました。ポイント圏外でのゴールにはなったが、ピットに出て走り続けることで少しでもライバルへのプレッシャーになればと思ったし、少しでも何かの可能性につながればと思いました。今回の落胆は大きいですが、まだあと一戦残っている。わがチームの集大成を最終戦の鈴鹿で見せられるように、しっかり準備をして臨みたいと思います」

ドライバーコメント

Aドライバー:吉田綜一郎

「スタートの混戦で一瞬抜け出せたんですが、4号車のフィットに抜かれてしまった。その時の位置どりが悪く、さらにもう1台に抜かれることになった。最初の走り出しのペースは悪くなく『これならついていけるかな?』と思っいたんですが、その後はフロントタイヤがキツくなるなかロードスター勢がペースを落とさず走っていたので、スティント後半はロードスター2台をブロックしながら走るのに精一杯でした…。最後までそこを守りきれたのは良かったかなと思います。トラブルが出てしまったのは悔しかったですが、今週はメカニックの皆さんがすごく頑張ってくれた。予選までの急なセッティング変更にも対応してくれたし、決勝ではトラブルもすぐに修復してくれました。そこは本当に感謝しかない。最終戦はチャンピオンの可能性もまだ残っているので、諦めずに頑張ります」

Bドライバー:佐々木孝太

「突然のミッショントラブルでした。今まで壊れたことのない5速が壊れてしまったが、みんなの頑張りでコースに復帰することができた。ミッションケースにクラックが入っている状態だったので、復帰後も激しく走るとオイル漏れの可能性があった。なのでそこは労わりながら、誤魔化しつつ走りました。ここまでの流れをみて、作戦通りにいけば4位あたりにはいけるんじゃないかと思っていました。今回の岡山大会は厳しそうな感じは正直してましたが、みんなの頑張りでここまで戦えた。最後はトラブルで悔しい結果になってしまったが、チームのみんなにチェッカーを見せられたのは本当に良かったと思います。今シーズンはチームの総合力が上がっていて、チーム全員の意識が変わってきています。予選が終わった後も、みんなとご飯を食べながら『もっと出来ることはないか?』という議論に自然となっていました。ドライバー側がコースで1秒詰めて、メカニックが給油側で1秒、タイヤ交換で1秒詰めればそこで3秒追いつけることになる。みんなの力で足りないスピードをカバーしようという話をしていました。今回の決勝では途中までそれができていたんじゃないかなと思います。チャンピオン争いでは、トップとのポイント差が離れてしまいましたが、まだ可能性は残っているので最後まで諦めずに全力で戦います」

Cドライバー:妹尾智充

「苦しいスティントになることは予想していたので、そこでどれだけ踏ん張れるか?というのが勝負と思っていました。できる限り頑張りましたが、どうしても他のクルマの方がペースが速かったですし、あとは僕たちが背負ったウェイトハンデが微妙に効いたな、という感じもありました。軽さが武器のデミオですが、そこに重さが加わることで、けっこう苦しくなるなと感じました。でも、普通にいけば4位は確実に狙えたので…今回は負け方が悔しいですね。まだチャンピオンの可能性は残っているので、そこは諦めずにいきたいと思います」

チームスタッフ・メカニックコメント

アシスタント 後藤玲香さん

「私はレーシングドライバーを目指しているので、広島マツダ大州本店にあるシミュレーターで練習させてもらったりしています。今年の6月にN-ONEレースがあったので、そこに向けてシミュレーターで走り込みをさせてもらいました。今大会も少しでも勉強になればと思いお手伝いをさせてもらいましたが、すごく楽しかったです! いつもは一人で練習してるんですが、チームの団結力みたいなものが感じられて『凄いな!』と思いました。特に決勝でミッショントラブルが起きた時、一人だとどうしていいか分からなくなりますが、皆さんが指示を出しながら効率よく作業をしていたので、改めて『チームって良いな!』と思いました。次も機会があれば、ぜひこうしてお手伝いをして、もっと勉強したいです!」

宇品本店 藤井琢己さん

「僕は入社2年目なんですが、レースのメカニックに少し興味があり、せっかくならば経験したい…ということで、HM RACERSの派遣メカニックに志願しました。いつもレースの時は観客席から観ているのですが、ピットに入ってメカニックをやる側になり、すごく大変だなと思いました。これだけ長い間サーキットにいることもなかったし、期間中に何度もセッティングをやり直して、その度にバネを外したりするというのも初めての経験でした。決勝ではトラブルが起きてしまいましたが、クルマがピットに入ってきた時どうすればいいのかが分からず、バタバタしたりしましたし、タイヤ交換も店舗とは違う早さと効率を求められる。他のメカニックの動きを見ながら行動したりするのが大変でしたが、何に対しても“効率の良さ”を求めて意識するのは大事だなということを学びました。これは店舗での車検や点検にも活かせられることなんじゃないかと感じました」