REPORT

RACE REPORT

2020.09.08

ピレリ ・スーパー耐久シリーズ2020参戦レポート
~第1戦富士~

2020年9月5日~6日にピレリ スーパー耐久シリーズ2020第1戦『NAPAC 富士SUPER TEC24時間レース』が静岡県の富士スピードウェイで行なわれ、102号車ヒロマツデミオマツダ2(佐々木孝太/吉田綜一郎/大崎悠悟/加藤潤平/吉田隆之介)はST-5クラス3位に入り、シーズン開幕戦で表彰台を獲得する幸先の良いスタートを切った。

新型コロナウイルスの影響で半年遅れの開幕

当初は3月下旬に開幕する予定だった2020シーズンだが、新型コロナウイルス感染症の拡大により開幕は延期され、シリーズスケジュールも大きく変更されることになった。これにより、当初はシリーズ第3戦として開催予定だった富士24時間レースがいきなり開幕戦に組み込まれることとなった。通常ならば、序盤2戦に参戦してシーズンで一番の長距離レースに備えて調子を上げていくのだが、そのプランも大きく崩れた。102号車に関しても今年は車両に対して新たな試みをしている部分が多く、それをシーズン前のテストでしっかり走り込んでマシンを熟成させておきたかったところだが、コロナ禍の影響で満足いく準備ができないままでのシーズンインとなった。
今年も現場で作業するメカニックにはは広島マツダのディーラーメカニックから選抜されたメンバーが参加。特に開幕戦では各店舗から精鋭メンバーを集め、なかには昨年の富士24時間レースを経験したメカニックもおり、自分たちから率先して様々な対応に当たるなどしていた。例えばピット作業でも少し手間取るシーンがあった時はすぐにみんなで対策を練って次の作業で改善するなど、24時間レースを戦うにつれて精度を上げていっているという様子がみられた。

トラブルや不運もあり予選では大きく出遅れる

週末のレースに先立ち9月3日(木)から練習走行が始まったのだが、102号車はいきなりトラブルに見舞われた。富士24時間用に用意してきたエンジンの調子が芳しくなく、早々にエンジン交換を決断したのだが、その結果ドライコンディションでの走行がほとんどできず、不安要素を抱えたまま9月4日(金)金曜日の公式予選に向かうこととなってしまったのだ。
まずAドライバー予選では佐々木が車両確認を行なったあとにタイムアタックに突入したが、アクシデント車両が発生し赤旗が出されてしまった関係で満足いくタイムを刻めないままST-5クラス11番手セッション終了となった。続くBドライバー予選は吉田綜一郎がアタックするも、セッティングが思うように決まっていなかったことが影響しベストタイムは2分08秒648。クラストップから約1秒遅れの4番手となった。これで両ドライバーを合算した合計タイムは4分20秒711となりST-5クラス11番手、全クラス総合では44番手となり、決勝レースは最後列からのスタートとなった。
そんな予選日に広島出身のシンガーソングライターTEE氏がチームの応援に訪れた。彼は佐々木と知り合いで、それがきっかけで今回のチーム訪問が実現し、ドライバーやメカニックにエールを送った。

決勝は悪天候により4時間以上も中断されるなど波乱の展開に……

当初の天気予報では雨模様の中でスタートを迎えるかと思われたが、9月5日(土)は朝から青空が広がり、ドライコンディションの中で決勝スタートを迎えることとなった。公式予選では不運もあって後方からのスタートとなった102号車だが、昨年の経験をもとに決勝レースを想定した走らせ方を事前テストの段階から全ドライバーに徹底させていた。24時間という長丁場をトラブルなく走りきるためにエンジンの回転数や使用するギアについても細かく決めていた。その分、我慢を強いられるレースになるのだが、逆に言えばトラブルが起きてしまうと、長時間ガレージでの修復作業を強いられ、それがそのままタイムロスとなってしまう。それを未然に防ぎ最終的に上位に進出していくという戦略を選んだのだ。

さらに決勝前のウォームアップ走行でセッティングの見直しも行ない、ドライコンディションでのマシンの動きも改善。スタートは佐々木が務め徐々に順位を上げていった、途中のピットストップで吉田綜一郎にさらに前のマシンを追いかけたのだが、開始1時間30分を迎えるあたりから本格的に雨が降り出し、3時間を迎えるところではコース上が水に浸かってしまうほどの大雨となった。競技団はレース続行が難しいと判断し開始3時間07分(18時07分)のところで赤旗を提示。レースは中断された。大雨は夜になっても収まることはなく、時より雷鳴が轟くなど荒天となった。ようやく雨が落ち着いた22時30分にセーフティカー先導でレースが再開された。しかし、再開直後も再び雨が強くなり、ナイトセッションでは半分以上の時間でセーフティカーが導入されるレースとなった。  そんな中で102号車はうまくタイミングを見計らってピット作業を済ませるなどして、日付が変わるタイミングでクラストップに浮上。開始から11時間を迎えるところで全車義務となっている10分間のメンテナンスタイムも終了し、かなり有利な流れを築いていた。しかし、開始から11時間30分を迎えたところで思わぬ事態が発生した。ピット作業中に違反があったとしてペナルティストップ30秒を受けることになったのだ。ST-5クラスは上位が同一周回で争っていたため、このペナルティの影響は大きく、一気に4番手まで後退してしまった。それでも大崎、加藤、吉田隆之介を含め大雨という難しいコンディションの中で全員がミスのない走りをみせ、再び上位進出を目指した。

トラブル続出も粘り強く走行、3位表彰台に入り昨年のリベンジ果たす

ナイトセッションで降り続けた雨は午前7時30分ごろに止み、9月6日(日)のパートは一転してドライコンディションとなった。午前7時(開始16時間)の時点でST-5クラス3番手につけていたが、ここでさらなる試練が彼らを待ち受けていた。午前9時を過ぎたあたりから3速ギアの調子が悪くなり、チームは3速を使わずに走行するプランに変更することにしたのだ。富士スピードウェイでは3速ギアが要となるため、表彰台争いをするとなると大きな痛手となったが、ここでも全員で協力してマシンを労わりながら周回を重ねた。

さらに残り3時間を迎えるタイミングで突然雨が降り出し、路面コンディションは再びウエットとなってしまった。各チームとも急いでウエットタイヤを用意するなど慌ただしい様子が見られたが、102号車はここでも冷静に対処。何とかクラス3番手を守り続けた。レース終盤は吉田綜一郎がステアリングを握ったが、車内に設置してあるドリンクが底をつき、軽い熱中症になりながらの走行でレース終盤はかなり厳しい状況にあったが、それでもペースが乱れることなく3位でフィニッシュ。シーズン初戦で表彰台の一角に立つという幸先の良いスタートを切った。昨年は途中トラブルがありながらも粘り強く走り続けたが、ガソリンの量がわずかに不足しており、23時間59分でマシンがストップしてしまうというまさかの事態があった。頑張ってくれたドライバーやディーラーメカニックたちに24時間のチェッカーフラッグを受けるマシンの姿を見せて上げられなかったと一番悔しがっていた佐々木は、何としてもチェッカーを受けるべく、自身がドライブしていない時間帯でもチームの状況を逐一チェックしていた。それもあってか、24時間のゴールを迎え、笑顔になっているスタッフの姿に安堵した表情を見せていたのが印象的だった。